【CSLContest8】入賞ヨシ!!!コンテストを振り返る

CSL

えー、みなさん。5位入賞しました……。

こ、これが走馬灯ですか

思い返せば黒歴史と共に成長を重ねてきた僕。

初回はまぁまぁまともだった僕。

再現と空想の間で時間を忘れた僕。

構図の理解を深めたが、また時間を忘れた僕。

技術に酔い、技術に自惚れ、やはり時間に潰された僕。

悪夢は終わりを告げ、第1回以来の最終審査進出という光を見た僕。

果敢に挑むも、技術への理解が足りなかった頃の僕。

3度目の最終審査進出。テーマに沿うか怪しい変化球で簡単に打ち取られた僕。

足掛け3年、行われた7回のフォトコンテストに皆勤し、最高でも最終審査進出まで。入賞経験は一度もない。そして。

5位入賞。この記事は大会終わりに即執筆を始めたのですが、今はふわふわとした感覚で……。これが走馬灯なんですかね……?すみません……。

作品概要

タイトル「とある鉄のお気に入りの1枚

時: xx月xx日9時34分

場所: コウラーン1番街駅2番ホーム

メモ: 3016-587の長編成。帝国軍用の特別列車のようだ。撮影後は即撤収し事なきを得た。

大量の煙突と吹き抜けの駅ナカで待つ蒸気機関車の構図。スチームパンク風味の世界観と多様な文化圏から形成された帝国、その国力。審査員の方にしっかりと見て頂けて大変光栄に存じます。

架空ものを描こうとするときにはもちろんその背景を感じ取らせる必要がある訳です。そしてこれが感じられるように、このスクリーンショットには沢山の違和感を紛れ込ませてあります。

意図的に紛れ込ませた違和感についてヒント

紛れ込ませた変な部分の内、分かりやすい部分をいくつかピックアップしてみます。

  • 左右の対比
    西洋な建物が見える右側のホームには屋根が掛かっていますが、対して左側にはありません。右側は比較的整然としてますが、対して左側はごった返していますね。右側には見られない袖看板も、左側には所狭しと並べられています。左奥の宮殿のような建物は天にも昇るかのような高さにあり、とても現実的ではありません。
  • 方位の違和感
    我々が住む日本を含め、中国など歴史上比較的早期に力をつけたアジア圏、あるいはヨーロッパ圏は北半球にあります。では仮に”帝国”が北半球にあるとしましょう。時刻は朝9時と説明があるので、影の伸び方から、画角奥が北で、手前が南だと推測できそうです。しかし画角左手前にある鳥居のようなものがあり、さらに手前に日本風の本殿が見えます。つまりこの神社は北向きに建っているのですね。……何か気付きましたか?
  • 軍人・帝国の動き
    よく目を凝らしてみると、大砲があったり、かなり現代的な物見台があったりと、帝国の動きが感じられます。その中でも目立つのがちらほらいる軍人で、現代的な軍服を着ています。列をなすもの、銃を携帯しているもの、書類を持って話しているもの、それから銃を構えるもの……銃を構える……?はて、軍人が市街で銃を構えるものでしょうか……。

作品のバックボーン

想定は「イギリスが1800年代当時、スチームパンク的な跳躍技術を有していたら」。

当時の史実ベースはざっくりこう。

1840年(天保11年)、世界史における大体悪者=イギリスさんがタイマンで戦争を始めます。当時インドで作らせたアヘンを清さんに売りつける、所謂『三角貿易』によってがっぼがぽに儲けていたイギリスさん。これに黙っていないのが清さん。アヘン蔓延を許すまじとする清政府はイギリス商人からアヘンを取り上げ、アヘン取り締まりを強化。もちろんこれにおこになったイギリスさんは後にアヘン戦争と呼ばれる戦いを起こします。攻め入られる清はジャンク船などで対抗しますが、東インド会社の所有した汽船が活躍し、イギリス優位に終結。南京条約により香港島、後に開戦したアロー戦争(第2次アヘン戦争)を経て締結された講和条約『北京条約』により九龍の一部を割譲、または租借することとなりました。

もし、このアヘン戦争においてより強力な兵力差によって清を分からせることができていたら……?

ただこれをそのまま表現することは憚られると考えて、史実ではない独自解釈を複数取りました。

  • この『帝国』は、当時世界を股に掛けた超大国イギリスがモデルです。ただし言うまでもなくイギリスは王のもとに統治されていますね。ロイヤリティが発生すると街に漂う陰気のようなものの表現に差し支えると考え、帝国に変更しました。
  • アヘン戦争により後に割譲される九龍(Kowloon)をモデルとした都市を展開しました。1階が商店、上層階が住居のスタイルのショップハウスやペンシルビルが展開され、既に取り壊された九龍城のような、無理に積層した住居構造、そしてパイプラインはむき出しで表現したかったです。ただし先の通り九龍がモデルであってもここは九龍ではないので、少しもじっていたりします。是非ご自身でご確認ください。
  • 撮影された年月について、特段の想定はありません。想像にお任せします。
  • どうしても想定に矛盾が生じると考えたので、最終手段として右上の見きれた飛行船はかなりメルヘンチックとなっています。地上では少しでも現実感を意識しましたが、空は自由なので考えるのはやめました。どうとでも解釈して下さい。

古い軍服を着たプロップはなかったり、何故この時代に撮り鉄が存在するのかなど、どうせ矛盾しているので細かいディテールの食い違いは最悪魔法Powerでねじ伏せよう。そんなノリであります。

苦労したポイント・工夫したポイント

効果的なディテールアップ

フォトコンテストにはスクリーンショットの画角だけ街を制作してエントリーしてきました。今回も例によって作品はフルスクラッチで制作しました。

フォトコンテスト用に制作された街の全景。

僕の過去作はそもそも物量を配置するだけの時間がなく、物量勝負の土俵にすら入れていませんでしたが、エントリー報告記事で述べたように、ゆとりある時間で制作に取り組むことができたため、今作は僕自身のフォトジェニック力(ふぉとじぇにっくぢから)の低さを物量で補う形で挑みました

とはいえテキトーに物を増やせばいいというわけではなく、ごちゃごちゃ感をどう効果的に絵にすることができるのか、工夫する必要があります。

例えば駅を作る場合、ホーム部分や駅構内の壁面・天井などは基本的に物が置けない=ディテールが増やせないのでのっぺりとしがちです。フォトジェニック力が低い僕にはこれを生かし切れる自信がないため、構図の中から意図的に切り落としたり逆に近傍にして表示する部分を圧縮するなど、駅ナカの表現を避けるべきです。

が今回、架空世界だから非現実的なことしてもええやろの精神で駅ナカにしてみました。掘割の天井無し駅。中には露店を所狭しと並べ、煙突の影をホームに延ばしディテールを深めているつもりです。

このような掘割の駅をメインの構図とすることで、地上部分の表現をバッサリカットすることに成功しています。このようにメリハリをつけることでカットしつつも、凝るべき部分は力を掛けられているのは今までの経験が生きたように思います。

画角の外にあたる地上部分は未完成のまま。

パイプを作る

駅構内のディテールアップに関して、九龍モチーフなのでパイプをモリモリに盛りつけたい訳ですが、良さげなアセットがなかったのです。ということで作りました

背景にもあるRonyx69氏の「Blast Furnace」のパイプからテクスチャを拝借し、制作してみました。

Steam Workshop::industrial_rusty_pipes

[2023/03/11更新]公開しました。

Effect Moduleの難しさ

この画像は、苦労の証です。

煙はSteam(水蒸気マーカー)プロップを使用して出しますが、煙の出方が一辺倒なので絵的につまらないものです。そこで使用するのが、Procedural Objects の Effect Module です。エフェクトの出方を方位・威力・発生間隔などをパロメーターで指定できます。ということでこのモジュールを使い倒していきたいところですが、ここでクリティカルな問題が露呈します。

マップ上に Effect Module を設定したPOがある状態でセーブしこれを読み込むと、パロメーターを指定するウインドウが壊れる問題です

セーブする前に一気に設定しなければならないのかと狼狽えたものですが、ウインドウが壊れるだけでエフェクトが壊れてしまう訳ではないため、適当な自作パイプに Effect Module を考えうるパターンだけ適用し、煙を吹き出させたい部分にこれを置くスタイルで解決しました。

作品に写る煙の半分は Effect Module で、いずれも見えない部分にこのパイプが埋まっています。

最後まで、手を抜かず

写真を取る際にも気がかけられるようになったのが今回一番の成長ではないでしょうか。

僕が普段から気に入って使っているLUTが暗く、作品が全体的に暗いことは以前の講評でも指摘されていました。実際、コンテストでは暗い絵の表現は受けが悪かったので、転換点となった第5回コンテスト頃からは意識して好きなLUTを使わないようにしていました。

しかし今回たまたま軍国の表現に差し当たり、暗いLUTはシリアスな表現に向いていると考え、敢えて好きなLUTで我を貫くことにしました。いつものLUTなので僕の作品だと分かった人もいるかもしれませんね。

当初想定していた構図でスクショを撮って確認したところ、工場の煙突が丁度機関車の煙突と重なってエモかったため、構図を少しだけ変更してみました。

脳内最終選考ファイナリスト。これもかなりちゅき。

最大の反省点

最終審査配信が告知された際にサムネイル画像を見た僕は愕然としました。

「あっ」

これは盲点だったのですが、前回受賞作品とテーマがもろ被りしていたのです。

おそらくコンテスト直後に案を練ったからこそ起きたことかとは回顧するのですが、少なくともコンテストを目前に控えた頃には、かの作品のことは全く忘れてしまっておりました。ではかといって自分の作品だと白状するのもいかがなものかと思い、最終審査を待つ判断としました。

このような被せ行為はノンデリ甚だしいものであると同時に、自覚がなかったことが本当に恥ずべきこと反省しております。本当に申し訳ございませんでした。

“フォトコンテスト応募作品”としての落ち度

フォトコンテスト最大の反省点は先ほど述べた通りですが、これを抜きにしても作品の落ち度はあったように顧みます。そうでなければ今頃もっといい順位になっていたでしょうし。

先にも述べたように、今回の作品は構図の悪さを物量によって補填するものであり「フォトコンテストとしての場にふさわしい美しさ」には到底達していないものと顧みます。要するにフォトジェニック力の強化が急がれるのです。

例えば何を見せたいのか明示されていないこと。今回の作品をどストレートに表現すれば、機関車を見せつけることを最優先し、それ以外はどうでもいい構図とすべきでしょう。それにしては機関車が暗すぎます。

今回セカイ系の作品だったことを考えれば、大きな橋と電車が影から出でるさまは世界観を構築するために重要ですが、その世界の交通についてもっと解像度を高めることができたらよかったのかもしれません。例えばスチームパンクが発展するからこその架空の新交通システムをさらに置いたり、機関車を橋の上に置いたり、何か置くとよかったのかもしれません。

総括

期限を守る大切さをようやく理解した僕は、まさに七転び八起きにして初入賞を掴むことができました。しかし僕自身のポテンシャルを最大限引き出そうとして挑んだだけに、初歩で既に躓いていたことにエントリーした後に気が付いたり、別の表現があったのではないかと悔やまれることがいくつもあります。フォトジェニック力の不足は喫緊の課題であり、テーマにあった制作手法を自分のものにできていないと気付かされました。シティーズの技術や表現の幅というよりは、美術的な理解と研鑽を重ね、受賞したからこそ分かった新しい景色に喜びを感じつつ、僕はスタートラインを一歩踏み出します。

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